プロジェクト紹介
2018-2023
文化的記憶プロジェクト Cultural Memory Project
「文化的記憶プロジェクト」は、「知の伝達プロジェクト」を発展させた科研費基盤研究(A)「古代地中海世界における知の動態と文化的記憶」(2018-2023)によって進められています。文化的記憶とは、ドイツを代表する文化学者であるアライダ・アスマンと、そのパートナーでエジプト学者のヤン・アスマンによって提唱された概念です。彼らによれば、文化的記憶とは、人々の日常的なやりとりを通じて自然に受け継がれるコミュニケーション的記憶と対比されるもので、過去の意図的な想起と忘却を通じて数百年以上にわたって保持される公的な記憶のことを意味しています。その特徴は、種々のメディア(身体、声、文字、イメージ、建築物、場所など)によって客体化され、種々の制度(アーカイヴでの組織的な保存、正典の集成など)によってその伝承の経路が確保され、専門家集団(呪術師、詩人、聖職者、学者など)によって管理され、儀式的反復やテクスト解釈などの実践を通じて繰り返し活性化される点にあります。2021年には、武蔵大学(オンライン)で行われた日本西洋史学会第71回大会において、小シンポジウム「古代地中海世界における知の動態と文化的記憶」を開催し、周藤芳幸の司会のもと、田澤恵子、藤井崇、川本悠紀子、福山佑子がそれぞれの研究について発表しました。このプロジェクトの成果の一部は、周藤芳幸(編)『古代地中海世界と文化的記憶』山川出版社2022として公刊されています。そこでは、エジプト学・エジプト考古学から河江肖剰、田澤恵子、中野智章、山花京子、古代ギリシア史・ギリシア美術史・フェニキア史から長田年弘、佐藤育子、佐藤昇、澤田典子、周藤芳幸、師尾晶子、古代ローマ史・ローマ美術史からは川本悠紀子、小坂俊介、芳賀京子、福山佑子が、さまざまな角度から当該地域の社会における文化的記憶のあり方について論じています。
Cultural memory, as famously formulated by A. and J. Assmann, is a long-term collective memory that is represented by media (body, voice, letters, image, buildings, location), established by institutions (organized preservation in archives and compilation of canons), controlled by professional groups (shamans, poets, clergypersons, scholars), and revitalized through periodic rituals and formal textualizations. This project, supported by JSPS KAKENHI Grant Number JP18H03587 aims to shed fresh light on the function of cultural memory in the ancient Mediterranean world. We have published the partial results of this project as a collection of papers edited by Yoshiyuki Suto from Yamakawa Shuppansha Tokyo in 2022. The contributors include Yuko Fukuyama, Kyoko Haga, Yukiko Kawamoto, Yukinori Kawae, Syunsuke Kosaka, Akiko Moroo, Tomoaki Nakano, Toshihiro Osada, Mariko Sakurai, Ikuko Sato, Noboru Sato, Noriko Sawada, Ryosuke Takahashi, Keiko Tazawa, and Haruki Yasukawa.